同族関係者への不動産譲渡による含み損の実現

 所有する不動産に含み損をかかえている企業が同族関係者に、その不動産を売却し含み損を顕在化させ節税を意図する事例が数多くあります。
 その中には、否認された事例も多く、実行に際しては慎重な判断が必要となります。
 以下では、私見ではありますが、否認されないための注意点を記載しました。
 次の3つの条件を充たせば否認されないのではないでしょうか。

 (1)譲渡価額の金額は、時価であること。
 (2)会計上、譲渡損失の計上が認められること。
 (3)租税回避行為に該当しないこと。

1. 譲渡価額の金額は、時価であること。

(1)土地の時価の算定方法
次の①と②の方法で計算して、その計算結果を相互に検証して選択します。

(2)建物の時価の算定方法
次の①と②のいずれかを選択します。


2.会計上、譲渡損失の計上が認められること。

監査委員会報告第27号「関係会社間の取引にかかる土地・設備等の売却益の計上についての監査上の取扱い」が参考になります。
それによると、以下の点を総合的に判断すべきであることが明らかにされています。

 (1)合理的な経営計画の一環として取引がなされていること
 (2)買戻し条件付売買又は再売買予約付売買でないこと
 (3)資産譲渡取引に関する法律的要件を備えていること
 (4)譲受会社において、その資産の取得に合理性があり、かつ、その資産の運用につき、主体性があると認められること
 (5)引渡しがなされていること又は、所有権移転登記がなされていること
 (6)代金回収条件が明確かつ妥当であり、回収可能な債権であること
 (7)売主が譲渡資産を引続き使用しているときは、それに合理性が認められること

 主要な活動に係わる不動産であれば、継続企業として売却する必然性に乏しいです。
 しかし、異業種や補助部門に係わる不動産であれば、譲渡する合理性のある場合もあり、また遊休資産を処分することもありうることです。
 さらに、譲渡会社は、自己の意志で使用収益できなかったり、譲渡会社が引続き支配権をもっているようでは、正常な取引とは認められません。


3.租税回避行為に該当しないこと

租税回避とは、次の①~③の行為であると言われています。

ところで、上記2の(1)~(7)を総合的に検討した結果、会社上、譲渡損失に計上することが認められると判断された場合には、租税回避行為には該当しないと考えられる。


4.参考になる裁決事例

(1)損金の額の範囲及び計算
巨額の売却損失を生じたとする土地の購入・売却取引は、虚偽架空のものであると認定した事例(棄却)
(昭和61年5月1日~昭和62年4月30日事業年度法人税・平02-02-09裁決)

(2)土地の譲渡損失
含み損のある土地の譲渡損失は経済取引として不自然な点が少なからず見受けられるけれども、異常な取引ということはできず、その真実であることの推定を覆すには至らないとされた事例(平成7年10月1日~平成8年9月30日までの事業年度の法人税の更正処分並びに重加算税及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消し・平11-12-22裁決)

(3)損金の額の範囲及び計算
請求人が同族グループ法人へ譲渡したとする土地建物等は、引き続き請求人の借入金の担保に供されており、所有権移転の登記もされておらず、請求人名義で他に賃貸されていることから、譲渡はなかったと認定し譲渡損の損金算入を否認した更正処分が適法であるとした事例(平成8年10月1日~平成9年9月30日事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに平成10年4月1日~平成11年3月31日事業年度の法人税の更正処分、平成9年10月1日~平成10年3月31日及び平成10年4月1日~平成11年3月31日各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平13-05-29裁決)
【裁決事例集第61集413頁】

(4)土地譲渡損失/取引実態の有無
土地売買が形式だけを整えたもので実態はないとすることはできず、土地の売買は行われたと認められるとして、土地の売却損を損金の額に算入しないとした更正処分の一部を取り消した事例(平成13年5月1日~平成14年4月30日事業年度分法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し、平16-06-10裁決)


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